夢の釣り糸

黒い猫が出て行って 一人になった
スミスを聞きながら 釣りをしたいと思った 
折れたほうきの柄に 破れた包帯巻きつけて
どぶ川に垂れた太い釣り糸 釣り針もえさもない
赤いチュチュ 浮浪者の左手 かえるの陶器人形
何も釣れない 何もひっかからない
笑う狸の皮 飢えたラオスの難民 ローザ・ルクセンブルク
目の前を流れていく たおやかに微笑みながら
眠りに落ちて 夢の中でも釣り糸を垂れ
月が溶けた夜に 竿を上げたら
ひっかかっていたのは 遠い昔に脱ぎ捨てた自分だった
吊るされた自分に言う これは現実かい?夢なのかい?
獲物は無言で首をふる たおやかに笑いながら