2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

虹色ポップ

茶色く汚れた白い布紐をつたっていき、つないである四角い柱を下から眺めて、不意にそれが自分の父親のような気がする。長い間眺めても、それは錯覚ではないとわかる。やはり柱は父親以外の何ものでもない。私は柱にすがりついて泣く。それを見かけた母親は…

心得

物語や構成など必要なく、目の前を一瞬だけよぎる光をつかむようにして、書かなければならないのだ。それは言葉ですらなく、一瞬の吐息、あるいは、脳から発せられる閃光のようなもの。

緑色の狂気

蟻の大群に運ばれる彼の右足の親指に嵌められた指輪の深い緑色の宝石はいつの間にか転がり落ち、底の見えるほど澄んだ青の湖の中に沈む美しい男の死体の胸の真中に漂着して、百年を生きた黒なまずに一息で飲み込まれるまで、静かに空を見つめていた。

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時間を大鉈でぶつ切りにして、その断面に朱肉を塗り、厚切りのアクリル版に押したもの。

時の空

明日の選択肢を一つずつ削り取るだけでは足りない。昨日の叡智を踏みにじるだけでも足りない。未来は溶けきったグラスの氷だと認識し、過去は忘れ去られた野武士の骸として扱い、現在でさえチチカカ湖を飛ぶ蝶の見た夢のように行動しなければならない。

ケンの自覚

一日が7日で一週間になり、それが52回続いて1年が終わり、また新しい年が始まるということを彼が知ったのは、5歳の時だった。 その時、彼は不安で泣き出してしまった。 こんな日が!こんな日が、あと何十回も、何百回も、何千回も!!