灰をかぶった娘の揺れる小指

私がまだ2度目の誕生を経る前、世界はよほど私の近くにあった。
友人は誰もが優しく、家族は皆暖かかった。
花々は瑞々しく、空はつかめるほどに近かった。


しかし、一度死んでからは何もかもが変わってしまった。
物は全ての色合いを失い、灰色の絵の具が空から降りかかっていた。
隣人の顔は誰も彼も同じに見えた。なぜなら、ほとんどの顔には目や口がなくなっていたから。
私は絶海の孤島に置いてけぼりを食らったような、宇宙の片隅に放り出されたような、骨を突き通す寒々しさを感じるようになった。
私は一人だ。
だが、その分、私は誰にでも笑顔を振りまけるようになった。
あの間抜け面のAや、鼻持ちならない態度が勘に触ったTにさえ、僕は今は喜んで笑顔で話しかけることができ、それどころか抱きつかんばかりに歓待する。
皆、同じ顔なのだから、誰も関係ない。
記号化した顔というものならば、私は愛することができるのだ。


昨日、鏡を見たら、私も同じ顔だった。
私は一人ではなかった。
そして、私は自分さえも愛せるようになったのだ。