悪来

私は悪い子です。
社会の規範になんら意味を認めていません。それどころか破壊してやりたいくらいです。
私は悪い子です。
みんなが求めている幸福が理解できません。裕福、家庭、栄誉・・・・そういったすべてがただの単語としてしか認識せず、思い描くことはできますが、実感は一切ありません。
私は悪い子です。
父を殺し、母を姦し、娘を虐げました。でも、それを物理的状態の推移としてしか捉えられません。
私は悪い子です。
時間の流れる方向がわからず、ただ私の興味は過去に逆行していくばかりです。未来は広大な平野ではなく、過去のCCだと見ています。
私は悪い子です。
自分が悪い子だとわかっていながら、それを直す方法がわかりません。でもそれを進んで学ぼうとする意欲もありません。良い子たちは真っ白なのっぺらぼうだとしか思えず、自分がそうなっているのを想像すると心底恐ろしいです。
私は悪い子です。
私の心をとらえるのは抽象的なことばかりです。青い花を燃やし尽くした狼の雄叫び。断崖をよじのぼり、頂上付近で滑り落ちる男。水の底で眠る王女の右人差し指にはめこまれた瑪瑙の指輪。これは抽象的というよりは言語的なこととも言えるかもしれません。ですが、私にとっては唯一の現実、信じるべき第一教理なのです。
私は悪い子です。私は悪い子です。私は悪い子ですか?